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パニック障害患者は対人援助専門職に向いているか

🍅ここでは、パニック障害患者は対人援助専門職に向いているかについて、管理人の教育実践経験から述べたいと思います。ここでいう対人援助専門職とは、看護師、社会福祉関連専門職などの職種を指すとお考え下さい。

1.パニック障害患者は対人援助専門職に向いているか


🍅まず、結論から申し上げると、


向いていない。
ただし、やってみなければ分からない。



(1)患いながら対人援助業務に従事している専門職はたくさんいます
🍅事実、パニック障害や気分障害を患いながら、あるいは、それによって服薬しながら対人援助専門職として業務に従事している人は管理人の知る限りたくさんいます(本当です)。そして、パニック障害や気分障害を患っている学生さんの全員が対人援助専門職の養成施設看護学校や専門学校、大学などからドロップアウトするわけでもありません

  ※「養成施設」とは学校のことです。「実習施設」(実習を行う臨床施設)と混同しないように。

🍅対人援助専門職の養成施設に入学してくる学生さんの中には、自分自身が病気を患っている経験を役立てたいとか、子ども時代に大変な想いをしたからとか、ご家族に病気や障害を患っている人がいたからとか、そういった体験をきっかけとしてこの職種を目指したという人が結構たくさんいます。管理人は、主として1クラス30~40人規模の教室での教育経験が多かったのですが、経験的には30~40人のクラスであれば毎年少なくとも1~2人は心の病気を抱えているものです。

2.対人援助専門職養成課程の学生さんへ


(1)実習にまつわるドロップアウトが多い
🍅対人援助専門職の養成では、そのカリキュラムの中に必ず現場実習があります。これは、看護師養成課程であれば病院、社会福祉士・介護福祉士養成課程であれば老人福祉施設や障害者福祉施設など、学校以外の実践現場で何週間、何か月かを実習するものです。学生さんがドロップアウトする確率が高いのがこの実習期間中です。
🍅管理人は社会福祉士という国家資格を持っているのですが、そのために実習を経験しました。パニック障害(当時はパニック障害という診断名は知りませんでしたが…)を患っている管理人としては、実習先の利用者のケアよりも自分自身のことで精一杯で、どの実習も成績は及第点でした。お恥ずかしい限りです。


(2)「障害」を理由に実習停止・落第させることはない。ただし…
🍅対人援助専門職の養成施設は、学生さんに「障害があるから」(≒各種障害者手帳を持っている、医師から「~障害」と診断されている、など)という理由で実習を停止させたり、落第させたりすることはまずありません。これは差別になるからです。
🍅しかし、実習中の具体的場面で「利用者や職員とのコミュニケーションがうまく取れないことや利用者と積極的に関わろうとしないことによって実習を停止させることは非常に多いです。要は、実習では障害の有無にかかわらず、基本的なコミュニケーション・スキルを持っているかどうかが問われるのです。実践現場では、コミュニケーションが不足していたり、齟齬があったり、職員間の人間関係がうまくいかなかったがゆえに介護事故が生じたり、利用者が死亡したりするリスクがあるので、コミュニケーション力は対人援助専門職には必須です。


(3)対人援助専門職は知識だけではどうにもならない
🍅対人援助専門職は特殊な職業であるといえます。すなわち、知識だけではどうにもなりません。また、学校内などの閉じられた空間で訓練したからといって、実践現場で使い物にはなりません。実習を行い、職員として実践現場に出て経験を積むことがなによりも重要で、それがその専門職個人のキャリアアップに繋がります。
🍅たとえば、管理人のような養成施設の教員は通常、座学の科目の成績はそれほど重視しません。対人援助専門職であれば誰でもお解りと思いますが、介護や相談援助、面接技法などの技術的な側面は頭ではなく身体で覚えるもので、かつ、法制度を含む知識的な側面も実践現場で仕事をしていくうちに身体で覚えていくからです(ただし、人間の尊厳・価値や専門職倫理は学生の段階で十分知っておくことが必要)。


(4)欠課時数超過だけは助けられない
🍅養成施設では、座学の成績が良いに越したことはありませんが、実習の成績が良くて座学の成績が悪い学生さんに対しては、再テスト、再々テスト、その他を行うことによってできる限り教員が引っ張り上げます。しかし、その逆、座学の成績がどんなに優秀であっても実習の成績が悪い≒停止になった学生さんについては、もちろん再実習は行いますが、それでも改善がみられない場合は留年・退学してもらうことが多いです。
🍅なお、両方のケースともに最も困るのは欠課時数超過です。これは、残念ながら教員の力で引っ張り上げることはできません。管理人が想定しているのは専門学校の例ですが、大学も近年はどんな授業であっても出席を取るところが多いので、欠課時数超過は学生さんにとって致命傷となります。


(5)実習をこなすことと欠課時数超過に注意すること
🍅話を戻して、パニック障害を患っている学生さんについては、とにかく実習をそつなくこなすことと欠課時数に注意すること、この2点のみ気をつけてもらえれば普通に卒業することができ、あとは国家試験を受験し、合格するとよいでしょう。
🍅繰り返すようですが、大学であろうが専門学校であろうが、欠課時数だけは教員が手当てすることはできません。養成施設の教員は、よほどの世間知らずな教員でない限りは、学生さんをできるだけ中退させないように努力します。なぜなら、中退者を増やすと教員の責任にされるからです。特に私学の場合は、学生さんからの学費収入が教員の給与の一部になっていますし、安易に中退者を増やすと学生さんをリクルートしてくる学生課や入試課などの事務方との関係が悪くなってしまいます。

3.実習をめぐって


🍅パニック障害とは離れますが、以下、別段内緒にすることでもなく、むしろ学生さんが知っておいたほうがよいことを書いておきます。もし学生さんがご覧になっているならば、これを参考に円滑に実習を済ませて頂ければと思います。
🍅まず、対人援助専門職関連の学生実習は、①学生、②実習施設(実習担当者)、③学校(実習巡回教員)の三者のバランスから成り立っています(下図)。このバランスが何らかの原因によって崩れると実習がうまくいかなくなります。学生さんの問題、実習施設(実習担当者)の問題、学校(実習巡回教員)の問題、そしてこれら三者の相互作用・交互作用の問題があります。

実習におけるトライアングル

🍅管理人はもう長いこと実習巡回をしていませんので現在どうなっているのかは知りませんが、管理人が現役だった頃は、学校は実習施設に対して実習をさせてもらうようにお願いをする立場なので、三者間の力関係は「実習施設>学校≧学生」になり、私たち実習巡回教員は得てして実習施設にヘコヘコせざるを得ませんでした。なので、実習施設の実習担当者が「この学生さんの実習を停止させたい」と訴えてきたときは、理由の有無を問わず言うことを聞くのが通例でした。
🍅ただし、この「実習施設>学校≧学生」という力関係があるがゆえに、ごく稀に実習施設の専門職がその力を利用して実習生いじめをしたり、学校に対して無理な要求をしたりすることがあります。この点で管理人は過去2回、実習施設に対してクレームを入れたことがあります(今思えば、身の程知らずなことをしたなぁ~と思います)。一度目は、学生さんが書いた拙い実習日誌の内容を学生さんの目の前で複数の職員が笑いものにした件。これに関しては、職員の上司にあたる管理職から丁寧な謝罪があり、学生さんも心折れることなく実習を終えることができました。二度目は、実習担当者が実習生をいびることで有名な実習施設で、学校としても芯の強い学生さんを送り込んだのですが、その芯の強い学生さんでさえ耐え難いという悲鳴が聞こえてきたことから、さすがに目に余るとして苦情を申し入れたのでした。この実習施設からは後日管理人を名指しで施設長から電話があり、「てめえふざけんなよ」的な口調で脅迫まがいのお叱りを頂戴しました(管理人は出禁になっています)。一応念を押しておきますが、上に述べたような実習施設はごく稀です。実習施設(実習担当者)のほとんどは優秀な方々であり、また施設職員さんも実習生慣れしており、学校(実習巡回教員)との関係も良好でほとんどの実習は円滑に進んでいます。
🍅現在、この「実習施設>学校」という力関係は以下の2つの点で微妙に変化しつつあるようです。一つは、深刻な人材不足から、実習施設が学生を早めに囲い込みたい(=自施設に就職させたい)がゆえに人材の供給源である学校側に対してヘコヘコし始めたこと、もう一つは、実習停止をめぐって訴訟事例が現れはじめたことです。これらのことによって、実習にまつわる力関係が「学生>学校≧実習施設」に変化してきました。
🍅特に、後者の実習停止という事態は敏感に対応すべき問題です。学生さんは実習停止に不満がある、実習施設は実習を停止させた合理的な理由がある、学校は丸く収めたいが実習施設に頭が上がらない立場である、という三者の利害がうまくまとまらずにこじれてしまうと、訴訟に発展しやすいといえるでしょう。管理人は個人的には、学生を実習停止させようとするときは、学生さんとその保護者、実習施設の実習担当者、実習巡回教員の三者が会同して停止に至った事実関係を三者が合意し、停止の手続きを進めるべきであると考えています(こうした方法を既に採用している学校もある)。
🍅管理人は、学生さんの実習にはとにかく苦い思い出が多いです。金髪に染めて実習に臨もうとした学生さん、タトゥーを隠さず実習に臨もうとした学生さん(金髪にせよタトゥーにせよ、その是非は今の若い人がこれからそのあり方を考えればいいと思っています。時代は変わりつつありますから)、首についたキスマークに気づかず実習して注意された学生さん、差別語を言ってしまい一発停止になってしまった学生さん、管理人が実習施設の実習担当者に「教育とはどうあるべきか」を1時間にわたって説教されたこと、管理人が実習反省会でついつい「医師」のことを「お医者様」と言ってしまい実習担当者の不興を買ったこと、コミュニケーションが乏しいという理由で実習を停止させた学生さんの親御さんから管理人が強いお叱りを頂戴したこと、などなど。しかし、心の病気を持つ学生さんも含め、苦労している学生さんが周りに支えながら数度の実習を無事終えるのを見るのは、一教員として本当に嬉しいものです。

4.実践現場に出た後に注意すること


(1)自己覚知をすべし
🍅さて、パニック障害を患っている学生さんが対人援助専門職として実践現場に出るにあたっては、自分の思考傾向や行動傾向を十分によく知っておくことが必要となります。看護師であれ、社会福祉士であれ、精神保健福祉士であれ、学生のうちに「自己覚知」という言葉を必ず習います。
🍅自己覚知という作業をやっていないと、先のページで触れたように、同じ疾患を抱えている利用者に直面したときに自分の境遇と重ね合わせてしまったり、またそのような利用者から頼られ過ぎたりすることに気づかず、共倒れすることになりかねません。対人援助専門職が何らかの病気や障害を経験していれば、利用者や患者をよく理解できることは確かですが、このことは薬にも毒薬にもなります。


(2)燃え尽き症候群に注意すべし
🍅管理人から特にご注意申し上げたいのは過剰適応です。パニック障害を患いながら実践現場に出る、そこまでは良し。問題はその後で、同じような疾患や障害を持つ利用者を前にして、思い入れが強すぎたり、24時間いつもその利用者のことが気になったりすると危険水域だと自覚することが肝要です。
🍅そして、医療にせよ、社会福祉にせよ、パニック障害患者に対するサービスやサポートは、これまで別ページでさんざん取り上げてきたように不完全で、制度的な仕組みもまるで不十分です。ここで対人援助専門職としての限界を悟るわけですが、過剰適応してしまいがちな専門職はたいてい、いわゆる燃え尽き症候群バーンアウト)に陥ります。
🍅これを予防するためには、あらかじめ自己覚知しておくことと、自分が身を置いている実践現場について、少し離れたところから「眺める」ことです。精神障害者に対するサービスやサポートの不完全さ、不十分さは、その対人援助専門職ひとりではどうすることもできません。「その範囲内でベストを尽くす」という考え方ができれば、バーンアウトを予防できると思います


(3)許容範囲を広げる努力をすべし
🍅あと、対人援助の実践現場には、医療、介護、社会福祉、高齢者福祉、障害者福祉、子ども家庭福祉、低所得者福祉、その他さまざまな分野ごとに特有の「職業風土」や「実践風土」のようなものがあります。
🍅全般として、良いことなのか悪いことなのか管理人にもよく分かりませんが「細かいことにこだわらない人おおざっぱな人が対人援助に向いているといえるでしょう。要は、許容範囲が広ければよいのです。具体的には、①(限界はあるにせよ)どのような利用者であっても受容できる人であること、②理想と現実とのギャップを受容できる人であること、の2点です。これらは学生のうちに意識的に訓練しておけばよいと思います。


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パニック障害を患う方で対人援助専門職にチャレンジしてみようという方、是非頑張って下さい!

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